◇福島県内大学図書館連絡協議会

 

福島県内大学図書館間相互利用制度(概要)


 本制度は、福島県内の大学図書館等10館によって構成された、福島県内大学図書館連絡協議会が設立の母体となった。1988(昭63)年に開催された連絡協議会総会において、相互利用制度検討委員会の設置が確認され、その後、鋭意検討が進められ、1年後に開かれた同総会において「相互協力協定書」ほか4件の成案が承認されて、1989年10月、正式に実施に踏み切った。その後、1992年の連絡協議会総会において、本制度への県内の主要市町立図書館(市立9、町立1)の参加が承認され、設立機関・館種のちがいをこえて、ほぼ県内全域の図書館が相互協力する体制が整った。

 本制度は、大学図書館連絡協議会加盟図書館(13館)及び参加県内公立図書館(19館)相互の間で、各館に所属する研究者の研究・教育活動に資するため、各館の相互協力を一層充実させることを目的に作られたもので、図書館自体及び各館が認定する研究者を対象として、各館所蔵の図書・資料の閲覧、現物貸借、文献複写、参考業務を行なおうとするものである。そのための協約は、「相互協力協定書」「相互利用実施要項」、三つの「実施細則」及び「申し合わせ」とから成る。1995年度には後3者を整
理し、後2者を「福島県内大学図書館間相互利用実施に関する申し合わせ」に一本化した。

 本制度は、他の主題別・地域別相互協力組織等の制度と比較して、とりわけ「先進的なシステム」と評される次の4特徴をもっている。①当初は、公立図書館は県立図書館1館のみであったが、1992年度からは県内公立図書館の参加があり、このことによって、大学図書館と公立図書館間という異種図書館間の相互利用制度が確立した。②相互利用の中核は何と言っても現物貸借である。また、所蔵調査、所蔵機関調査及び書誌的調査等の参考業務は、相互利用の前提ともなるものであるから、これら業務をも加え、相互利用の範囲を広いものとした。③当然のことながら、設立機関、設置目的等の異なるいわゆる異種図書館間の相互利用制度であることから、貸出条件等において各館の規則・事情を最大限尊重するように配慮した。④「共通利用証」の発給を自動的に受けられるのは、協議会加盟大学の教職員、大学院生である。これに準ずる者も図書館長の認定によって研究者扱いができる。このことによって大学の理工系学部に所属する技官や実習助手のほか、いわゆる在野の研究者の大学図書館の利用を可能とした。その際、申請者の研究内容そのものを最も重視し、研究機関に所属しない「地域にあって高度に専門的な研究に従事する者」をも図書館長の判断によって、「研究者に準ずる者」として扱い、「共通利用証」を発給できることとした。

 福島県内図書館全体のまずしさ、その地域的偏在及び各館の零細さが、本相互利用制度成立の主動因とはなったが、それ自体が相互利用にとっては制約条件であり、大学図書館についてみれば、低調な利用実施状況及び他相互利用制度・他県への高い依存が示すように、研究図書館として県内にアテになる図書館はなく、本相互利用制度の発展の余地はまったくないかのようである。本制度に加盟・参加する図書館が、それぞれに相互協力を結ぶ主題別、地域別、機関内等の協力組織を主としながらも、本制度を、所蔵図書館資料の活発な相互利用、目録・所在情報の提供及び情報検索サービスの提供等の参考業務サービスの展開によって、それらを補完する有力な一地域協力組織として発展させなければならない。

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