『書燈』 No.22(1999.4.1)

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学内教官著作寄贈図書の紹介

 

『現代地域論』
東京 八朔社
1998.8
下平尾 勲 著
(経済学部教授)

 バブル経済崩壊後、不況は深刻化し、日本経済はもとより地域経済も急激に変化しており、地域の立場から地域に関する重要問題について発言しておきたいと考え、最近発表した論文をとりまとめた。

 その場合2つの問題意識があった。第1は、長期不況下での海外への資本流出と国内の産業合理化の中で、日本経済の再建を図るには、資本、技術、労働力を活用し、地方産業の発展と再生産が鍵であるということ、第2に、わが国の経済成長期には、地域と大都市との再生産、相互依存関係が存在していた。しかし自由化の下で地域をささえていた主要な産業の衰微ともに、地域における若年労働力の再生産力も低下し、地域の主体性確立が課題となった。

 このような問題意識の下で時代の変化をたて軸に、グローバルな視点を横軸に新しい地域を創造したいという気持ちをこめて、地域の現状をふまえながら地域産業政策、基盤整備や地域連携のあり方、行政の政策課題などについて論じたのである。

 (請求番号601.1/Sh51g 学内刊行物コーナー)

 

『日本的経営の論点 −名著から探る成功原則』
東京 PHP新書
1998.10
飯田史彦著
(経済学部助教授)

 日本企業に独自の経営スタイルとは何であり、いかなる評価を受け、どのような諸問題に直面しているのだろうか。本書は、本学経済学部の飯田助教授が、内外の150冊にのぼる「日本的経営」の研究書を分析しながら、このようなテーマを追求したものである。本書では、まず日本的経営論の系譜を概観し、従来の研究書で日本企業の特徴だとみなされていた特徴を整理する。次に、最大の特徴とされる「終身雇用」と「年功制」の真偽を論じたうえで、その根底にある「集団主義と愛社精神」や、「日本文化が企業経営に与える影響」に関する様々な論点について考察する。そして、著書全体を通じた考察をもとに、現在の日本企業に潜む問題点を指摘し、今後進むべき方向性を提示している。

 すでに『日経ビジネス』などの誌上において、日本企業の過去・現在・未来をひもとくために最適なテキストとして広く紹介されているが、学生諸君にも一読をお薦めしたい。

(請求番号335.21/ I26n 学内刊行物コーナー)

 

『権力装置としてのスポーツ 帝国日本の国家戦略』
東京 講談社選書メチエ
1998.8
坂上康博著
(行政社会学部助教授)

 「スポーツ狂時代」。戦前の日本にそんな時代があった。大正末から昭和初期のことである。

 人気の中心は、神宮の東京6大学野球や甲子園大会、大相撲であり、ラジオの実況中継に人々は釘づけとなり、ロス五輪、ベルリン五輪での日本選手の活躍は日本列島をゆさぶるほどの熱狂を生み出した。

 そして、こうした状況を見据えながら、国家によるスポーツの利用も進められていく。一見“自由の王国”にみえるスポーツは、こうして人びとの意思と国家の意思とがぶつかりあう“格闘場”となり、そこでの格闘や葛藤のなかに人びとの自由のありようと彼/彼女らが背負っているさまざまな困難が映し出されることになるのである。

 それを描き出すこと、これが本書の中心テーマであり、ぼく自身それに向かって全力を尽くしたつもりだが、さて、その出来ばえは??? 率直な意見や批判をいただければ幸いです。

(請求番号780.2 / Sa38k 学内刊行物コーナー)

 

 


gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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