『書燈』 No.24(2000.4.1)

前記事⇔⇔次記事

好評だった稀覯書展 福島大学附属図書館稀覯書展報告

 本学創立50周年記念事業の一つとして、本館所蔵稀覯書展を市内の中心地福島テルサ4Fギャラリー(上町)を会場に、平成11年10月29日から6日間にわたって開催いたしました。

 展示場には、本館がこれまでに収集したもののうちから、選りすぐった96種181点(内訳:図書101点漢籍16点 和本33点 文書14点 雑誌6点 肖像画5点 ノート 日誌 写真帳 掛絵 絵図 カードケース各1点)の稀覯書・資料を陳列しました。地域住民にとって関心が高い郷土資料、本学の歩みが分かる前身学校資料も展示しました。

 開場を待ちかねるように来られた方もあり、また福島市内の人が多いなか、北海道、東京などの遠方からもご来場いただきました。公務員、教員、会社員の順に多く、図書館員も7人見えました。男性は主に40〜70歳代の人が多く、女性は男性に比べて少なく、30〜50歳代が中心でした。11月1日は1Fで創立50周年記念式典・講演会があり、元教官・職員がなつかしい顔々を見せてくれました。2・3度と通われる人もあり、来場者の総数は約300人でしたが、本学学生はわずか数人というさびしさでした。

 それぞれに比較的長時間、興味深く、熱心にご鑑賞でした。なかでも、『国冨論』(スミス原著及び仏訳初版)、十七史、和算書、北斎の絵手本と北斎伝、今野源八郎先生旧蔵書、会津戊辰戦争関連資料、『宝永二年福島町之図』、磐梯山噴火状況実地調査書等、ゲーテンビー教師のノートなどに人気がありました。多くの人が最も興味深くご覧になられたものは、「大塚文庫」からの展示図書と『百科全書』でした。

 「大塚文庫」とは、平成9年春、本館に寄贈された故大塚久雄氏の蔵書約6,000冊(その他 雑誌 抜刷 ノート 原稿など)のことで、今回はそのうち、何度もくりかえして徹底的に読み・書き込まれてボロボロになった、M.ヴェーバー、K.マルクス、J.アンウィンなどの書物を一部開いて展示しました。その「韋編三絶」ぶりには多くの人が感嘆していました。

 ディドロ、ダランベール編『百科全書』は、その重厚な装丁とボリーム(全35巻、41×27cm)で来場者を圧倒しました。また、何人かは精緻な銅版図版に魅せらていたようでした。本館所蔵本は、パリ版ではなく、J.ラフによる詳細な両版の異同研究書との照合によって、ジュネーヴ版であることが今回明らかになりました。

 本展示会について、来場者にご意見・ご感想をお聞きしました。「すばらしいものばかりで感動しました」などの外交辞令に混じって、「毎年続けてください」「これらのものが現在どのように教育・研究に活用されているか興味あり」などドキリとするものがありました。

 全般的な満足度をたずねましたら、「大変よかった」「よかった」が合わせて8割弱でしたが、古典のわきに、肖像や簡単な解説文を付けるなど、キャプションに一工夫が必要だったようです。

 展示物の一部を除いて、直接手を触れて見ていだだきましたが、それはたいへん喜ばれました。ある1冊本の古書価が1,300万円であることを後日知りました。「知らぬが仏」とはよく言ったものです。

 学長をはじめ展示委員会のみなさま、選書、解説文執筆をお願いした先生方、事務局会計課のご協力まことにありがとうございました。

(渡辺武房 図書館専門員)

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

書燈目次へ