『書燈』 No.26(2001.4.1)

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学内教官著作寄贈図書の紹介

『情報化と社会』 2000.5 東京 八朔社
星野共二共編(経済学部教授)

 『情報化と社会』という書物をまとめるそもそものきっかけは、1992年から3年間にわたり電気通信普及財団の冠講座として、さまざまな分野の先生方に講義を担当していただいたことがベースになっております。その後この講座は、担当者が替わりながら、共通教育の総合科目として定着しました。そうした経過の中で、情報化についてはそれぞれに専門書が出版されているものの、情報化の進展や社会的影響を広く論じる書物が少ないとの意見が聞かれるようになりました。せっかくバリエーションに富む先生方にその分野の動向をお話いただいているわけですから、新家先生とも相談し、書物に纏めることにいたしました。情報化社会とは何かについて理解を深め、教育や経済との関連性を論議し、インターネット社会のあり方、個人情報の保護、その他新しい技術の動向などを分かりやすく講義調で述べています。どうぞご一読下さい。

(請求番号007.3/A67J 学内刊行物コーナー)

 

『臨界被曝の衝撃』 
2000.4 東京 リベルタ出版
清水 修二共著(経済学部教授)

 一昨年東海村で起きたウラン臨界事故は歴史に残る国民的体験でした。現場周辺の住民ばかりでなく、TVの画面をとおして大部分の日本国民が「被曝」の体験を共有したのです。けれどもあの事故の内容や被害の性格といったものを、ちゃんと理解している人がどれだけいるか、実は現在でも怪しいものだと私は思っています。放射能と放射線の区別すらつかない人が実際少なくないのです。この本ではまず、あれがどういう事故だったのか、そしてなぜあんなことが起こったのかをやさしく解説しています。そうして、あの事故から何が見えてくるか、私たちはあの経験から何を学びとるべきかを論じてみました。「いまあらためて問う原子力」という副題をつけた所以です。共著者の野口氏は放射線防護学の専門家で私は社会科学専攻。理系と文系の二人三脚です。臨界事故では2人の尊い命が失われています。彼らの犠牲に報いる道は「学習」以外にないと思います。

(請求番号539.9/SH49R 学内刊行物コーナー)

 

『古代蝦夷(えみし)』
 2000.9  東京 吉川弘文館

『古代蝦夷の英雄時代』
 
2000.11 東京 新日本出版社

『蝦夷の古代史』
 2001.1  東京 平凡社

工藤 雅樹著(行政社会学部教授)

 私は古代の蝦夷を研究テーマとしている。古代蝦夷については蝦夷アイヌ説と蝦夷辺民説の二説があって、学界では未だ決着をみていない。蝦夷アイヌ説では古代の蝦夷はアイヌにほかならないと主張し、蝦夷辺民説では古代の蝦夷は文化的にも人種の上でも辺境に住む日本人であって、アイヌとは直接の関係はないと説く。したがって蝦夷辺民説は内容的には蝦夷日本人説といいかえることもできる。また古代の蝦夷については、堅いまとまりをもって大和朝廷と対峙していたと考える人がある一方で、何のまとまりもない無知蒙昧な人々であったとする説もあるようである。

 私は先に『古代蝦夷』において、蝦夷アイヌ説と蝦夷辺民説の対立は、一方の説に加担して他方の説を論破しようという方向では解決できないこと、また古代蝦夷の社会は部族制社会の特徴を有していることをを述べた。蝦夷アイヌ説が論拠としてきたことにも、蝦夷辺民説の論拠のなかにも、事実として尊重しなければならない点が多々存在すること、また蝦夷社会は集団間の対立が激しかったことをふまえてである。本書は私なりの古代蝦夷の全体像を提示しようとつとめたものである。

 その後たまたま二社から古代蝦夷に関する新書の執筆を求められた。そこで『蝦夷の古代史』では、蝦夷アイヌ説と蝦夷辺民説の対立をどう克服するかを中心に置き、私がどのような試行錯誤の後にこのような考え方にたどりついたのかについてもふれてみた。また『古代蝦夷の英雄時代』では、『蝦夷の古代史』で述べたことを要約した上で、古代蝦夷の社会をアイヌ社会やケルト人・ゲルマン人の社会などとも比較しながら、英雄時代という概念をも用い、古代蝦夷の社会は部族社会と考えられることを述べてみた。

 二冊の新書ではそれぞれ『古代蝦夷』を執筆した後に考えたことも含めるようにし、また、一般読者を念頭に置いて、できるだけわかりやす叙述を心がけたつもりである。三書の内容には重複する部分も多いが、それぞれに特色をもたせる試みはしたつもりなので、併読していただければ幸いである。

(請求番号212/KU17K  学内刊行物コーナー)
(       210.3/KU17K 学内刊行物コーナー)
(      212/KU17E  学内刊行物コーナー)

 

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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