『書燈』 No.27(2001.10.1)

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図書館の活用法 −カウンターの内側から−
教育学研究科 坂本敦史

 図書館のカウンターで私がバイトを始め、早1年半になる。この間、多くの素材(ここでは、本のことをこう呼ぼう)の取引を扱ってきたが、そこで気づいたことを少し述べていくことにする。

 どんな素材でもそうなのだが、素材を扱う際には、それ相応のコツがある。

 ①注文をはっきり伝える…例えば、寿司屋で「白身を適当に」と言えば、気のきいた職人であれば、旬の物を出してくれるであろうが、図書館は、そうはいかない。自分が探している本が何なのか、どの分野のものなのか(その分野も一般的に括られているものとは違うことが多いので注意が必要)、をはっきり注文すると、的確な素材選びのアドバイスができるのである。

 ②旬の素材があるとは限らない…旬の物はおいしいし、売れる。そろそろ秋刀魚がおいしい時期である。だからといって、いつでも品揃えが豊富なわけでも、新鮮な物が揃っているとは限らない。図書館の素材も同じで、期末レポート・テストの時期はいわば旬であり、品薄な状態が続く。また、いつでも新鮮な素材(最新刊)があるとも限らないが、注文することもできる。旬を逃すとほとんど使われていない素材も多く、旬をはずして利用すると、一夜漬けとはまた違った味わいがあるであろう。

 ③賞味期限は守る…今では「品質保持期限」というのであろうか?よく冷蔵庫の片隅で変わり果てた食料の姿を見ることがあるが、図書館の素材は幸いにして大抵の場合原型をとどめていることが多い。食べ終わってしまったものの賞味期限を気にすることはないが(私だけであろうか?)、食べないで残しておいたものが怖い。つまり、図書館の素材は、一度に多くを食べず、消化不良を起こさない程度がほどよい素材の味わい方であり、賞味期限を守るための方法であろう。また、どんな素材でも次の利用者がいるかもしれないという配慮も必要である。

 素材は、使う人の技量でおいしいものにも、苦痛な物にもなり得る。何気なく、必要に迫られて口に運ぶのも良いが、じっくり自分の目で吟味し、五感で味わうことも時として、優雅な時間となると思う。その時間の手助けを図書館のカウンター職人?がしてくれるであろう。

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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