福島大学附属図書館報 『書燈』 No.29(2002.10.1)

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図書館ジャングル
−カウンターの内側からー
山岸 祟

  「物理化学・・・?」

  図書館のカウンターでバイトを始めてはや1年半の月日がながれたが、今でも頭がフリーズ(私が日本中世史を研究しているのであり、物理とか化学とか、ましてや「物理化学」という学問とはかなり縁遠い世界で日々の生活をすごしているからだが)してしまう閉架図書の閲覧依頼が間々ある。しかし、そういう時こそ私は胸躍るものを感じながら閉架図書へと急ぐのである。

  私はつね日ごろより図書館をバイト先とも、研究のホームグラウンドともしている。だから、図書館のことは一般学生よりは熟知していると自負している。言うなれば、図書館は私にとっては「庭」のようなものであり、本はその庭に植えられている「植物」だと例えることができるだろう。

  しかし、時には自分とは縁遠い思いもよらない分野の本の検索や、閉架図書の閲覧を依頼される場合がある。それは、「庭」にあるいつもは雑草だと思っている植物をあらためて観察するというものであり、その本を見つけたときの喜びは新種の植物を自分の庭で発見するのに(実際に自宅の庭で新種の植物を見つけたことはないので、その気持ちが妥当であるか疑問ではあるが)似ていると思うが、どうであろうか。

  図書館を利用する一般学生のみなさんも自分が興味ある学問分野の見識をもっと深めたいという欲求をもって入学されたと思う。だが、みなさんにとって不慣れな図書館はまだまだ「庭」のような存在ではなく、いわば「ジャングル」のようなものであろう。どこに何があるかわからないし、どうやって採集した植物を持ち出していいのかもわからないからだ。しかし、みなさんには心強い道具や案内人(図書検索のためのパソコンや図書館の職員の方々)がいる。その助けを借りながら、自分にとっての新種の植物を手に入れて自分の学問の探求に活かしてみてはどうであろうか。

 自分に必要なものを未知の空間から自分の力で手に入れる。その時の喜びは何ものにも替えがたいものがあるはずだと私は思う。そして,それは単に本を手に入れるということにととまらず,学問の世界でも同じであると私は思うが,みなさんはどうであろうか。

(地域政策科学研究科)

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