『書燈』 No.23(1999.10.1)

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『役に立つ/立たない』図書館活用法
行政社会学部 鈴 木 めぐみ  

 図書館の利用については、発表、レポート、卒論のための調べもの、勉強など明確な目標と対象を持った場合と、「何か面白いものはないかな」と漠然とした期待をもって利用する場合の二つが考えられるように思う。
 「調べもの」に関しては、いかに正確かつ効率的に情報を収集できるかが重要になってくる。

 図書館というのは、よく使う情報はもちろんのこと、いつ誰が使うかわからないものも含めて、情報が多く蓄積されている方がいい図書館であると私は考えている。(何が将来必要になるか誰が予想できようか!ただ、すべてがそうある必要も、場所と予算もないが……)しかし、大規模になればなるほど、膨大な資料を前に迷路を探検する思いがすることになる。けれども、図書館たるもの、整理され、どこに何があるかわからなければ図書館ではない。ただの倉庫である。であるから、たとえ迷路のようであっても必ず探しだす方法はあるはずなのである。

 本を例にとれば、探したい書名や著者名などがわかっている場合は比較的楽である。大学の附属図書館であればコンピューター検索(1999年2月現在所蔵図書の7割が入力済み)、カード検索により短時間で請求番号を調べられる。後は実物を書棚から見つけてくるのみ。ない場合は他の大学などから取り寄せてもらったり、コピーしてもらったりすることが(ただではないが)できる。

 テーマだけが漠然とあり探す情報を特定できなかった場合、テーマもこれから探していこうという場合、これは問題である。これについて、簡単な答えはない。勉強するしかない。しかし、技術的な一般論として一つ述べるとすれば、情報がどこにあるかを示す情報というものが世の中には存在するということである。書物、文献の目録である書誌が典型例であろう。自分に最も関係する分野でのこの「情報の情報」の種類と特色をなるべく早く把握することである。紙に印刷されているものもあれば、電子情報となっているものもある。
 文献調査方法は実践(試行錯誤)を通して学んでいくのが一番である。(図書館で入門講座を開く場合があるのでそれに参加することもお勧めする。)必要な情報を探しだすことができる、これが大学で学んだ者が身に付けるべき技術のトップクラスに入ると私は考えているので、四年間でこの技術をぜひ磨いて欲しいと思っている。
 さて、ここまではある意味で必要に迫られての話である。もう一つ、「何か面白そうなもの」を図書館でどう見つけるか、という話をしてみようと思う。  最も単純かつ何の芸もない方法なのであるが、私のお勧めは、散歩のように背表紙を見ながらひたすらぶらぶらすることである。空き時間のつぶし方としていかがであろうか。本というのは著者が面白いと思ったことを書くのである。世の中にはこんなことを面白がる人がいるのだとわかるだけでも結構楽しい。自分に関係しない分野の方がより楽しい。実に変なタイトルの本もある。目に留まる本は日々変わるはずである。気が向いたら読めばよい。掘り出し物を見つけるのには無目的・非能率的なのが案外良いのである。大きい図書館ほど、この散歩は楽しい。欠点は開架式でなければならないところである。

 ひとは遊びとしても本を読む。遊びというのは往々にして無駄であり、役に立たないものほど楽しいものだ。巡り巡って役に立つ場合もあるが、それを遊びに期待するのは野暮というものであろう。学生時代に、この「無駄」を満喫していただきたい。

 

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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