『書燈』 No.23(1999.10.1)

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学内教官著作寄贈図書の紹介

『社會科理論與融合課程之研究』
台北 商県文化出版社 1999.1
臼井 嘉一著(教育学部教授)
楊  思偉譯(台湾師範大学教授)

 この著書は私の友人である台湾師範大学の楊思偉教授が、日本で発行されている拙著『社会科カリキュラム論研究序説』(学文社1989年12月) を翻訳して下さるということで作成されたものである。本著書の内容は、日本とアメリカの社会科カリキュラムの内容・特質の研究とそれを支える理論について述べられているが、併せて台湾・中国大陸の歴史・地理・公民の教育及び社会科という形態・内容論についてもつけ加えられている。実は、10年ほど前に台湾師範大学の招きで訪台し、台湾文部省の社会科教育のカリキュラム改訂を前にして何度か講演したことがあり、それがきっかけで本書が実現した。本書の6割は拙著の翻訳で、残りの4割は中国や台湾のことなども加筆して本書独自の内容になっている。
 「台湾漢字」なので日本人でも内容のおおまかな点についてはご理解いただけるものと思う。
(請求番号375.3 / U95s 留学生用図書)

 

『企業内地域間分業と農村工業化』
東京 大明堂 1999.2
末吉 健治著(経済学部助教授)

 「今朝新庄を出てから、険しい尾根を越えて、非常に美しい風変わりな盆地に入った。ピラミッド形の丘陵が半円を描いており、その山頂までピラミッド形の杉の林で覆われ、北方へ向う通行をすべて阻止しているように見えるので、ますます奇異の感を与えた。その麓に金山の町がある。ロマンチックな雰囲気の場所である。」(イサベラ・バード、高梨健吉訳『日本奥地紀行』平凡社、1973年、p.160〜161)。
 イサベラ・バードが東京から北海道まで旅行したのは1878年のことである。それから100年を経て、彼女の見た農村は急激な工業化の波に洗われることになった。彼女が「ロマンチック」と書いた「金山の町」を含む山形県最上地域を対象として、農村における工業化の実態を分析したのが本書である。キーワードは企業内地域間分業、地域的生産体系、地域労働市場、多就業構造。
(請求番号509.2 / Su19k 学内刊行物コーナー)

 

『信用制度の経済学』
東京 新評論 1999.3
下平尾 勲著(経済学部教授)

 最近金融現象に関する書物が多く出版されているが、個別的な金融現象を記述したものがほとんどであり、基本的な理論にまで言及したものが少ないように思われる。まず問題となるのは、貨幣・信用・金融制度とは何であり、それがいかに形成され、どのような役割を果たし、その限界は何であるかということである。
 信用制度は、具体的にでき上がった複合的な産物であるから、制度の根本的把握のためには、原点に立ち返って発生史的に理論的研究を行う必要があり、その結果として、現実的、具体的、多面的な役割および地位と意義を解明することができる。
 私の研究目的は、あくまでも現代資本主義が直面している貨幣・信用・金融制度の危機の解明にあるが、本書は、理論、学説、歴史を縦軸に、グローバルな視点を横軸にして、最近の諸問題を理論化し、古典理論を現在の状況の中で考えつつ、わが国の立場で論じてみようという意識の下に書かれた。
(請求番号338.01 / Sh51s 学内刊行物コーナー)

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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