『書燈』 No.27(2001.10.1)

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成13年度大学図書館職員長期研修報告
学術情報係 白田真紀子

 平成13年7月9日〜7月27日までの3週間、東京とつくばにおいて行われた文部科学省および図書館情報大学共催の大学図書館職員長期研修を受講してきました。

 講義要綱によると、この研修は、中堅職員に対し、学術情報に関する最新の知識を教授し、職員の資質と能力の向上を図ることにより、大学図書館の情報提供サービス体制を充実することを目的とする、となっています。

 講義内容は、次のとおりです。

1.大学図書館の管理・運営(8講義)

2.大学改革と図書館(5講義)

3.電子図書館的機能の整備とその推進(6講義)

4.電子的資料の導入(4講義)

5.国立情報学研究所の活動(3講義)

6.多様化する情報サービス(8講義)

7.社会の変容と大学図書館(4講義)

8.共同研究討議(2課題)

9.見学(6機関)

 大学図書館はいま、二つの点で従来の図書館とは違った立場に置かれています。

 一つは大学全体に関わることですが、行政改革によりこれまでの国立大学から独立行政法人としての国立大学に変貌しようとしています。さらに「遠山プラン」と言われている国公私立大学あわせた中で、トップ30の大学を世界最高水準にするよう予算の重点配分が行われるということです。大学の個別化あるいは統合化・競争化が進められようとしているなかで、図書館もそれぞれの個別化あるいは統合化が進むに違いなく、効率的な運用とサービスの質の向上がこれまで以上に求められ、目に見えるような効果をあげることが必要とされています。

 もう一つは社会の情報化・電子化が急速に普及し始めたことにあります。従来の紙を媒体にした図書や雑誌というものから、電子ジャーナルや電子出版といった電子化された形態での情報の提供に、図書館がどのように対応していくのかというのが大きな課題であります。

 では、これからの大学図書館の姿を部分的ではありますが講義の中から取り上げてみましょう。

 まず、サービス面ですが、紙媒体と電子媒体の混在は続くと思われますが、電子資料への比重が大きくなることは間違いないようです。なにより、電子資料の速報性、遠隔利用、同時複数利用、改訂・編集の容易性といった長所は、利用者にすれば願ってもないことになります。製本中で利用できない、欠号、紛失といった問題は起こり得ないのです。難点は電子資料が高額であることと、契約が中止されるとすべて無に帰してしまうという点です。これらについては、今後のコンソーシアムの動きや出版社の対応によって改善されることを願います。

 このような電子図書館ともいうべき機能は、図書館からすれば脅威でもあります。なぜなら、図書館でなくてもこれらのサービスは利用できるからです。図書館としては、利用者の要求に合致した情報を、いかに付加価値をつけて、使いやすく提供するかが重要になります。利用者に対する情報リテラシー教育もますます重きを置くことになります。

 次に機構面ですが、定員削減により職員数は減らされる一方です。そのなかで高度の専門性を要求される仕事をこなしつつ、従来のサービスも維持していかなければなりません。業務の見直しによっては、業務委託等も考えられます。その場合、専任職員の業務と委託する業務を明確に分ける必要があります。専任職員の中心業務としては、学術情報ナビゲーター的役割、選書・収書、企画・政策立案、渉外・広報・委員会があげられます。またさまざまな雇用形態に対応できるような管理組識を作ることも必要とされ、さらに、専任職員と非専任職員それぞれに必要とされる能力に促した人材養成の仕組みも課題としてあげられます。

 最後に、見学機関のなかで特に興味深かったのは、凸版印刷のVRシアターと国立国会図書館の工房のような資料保存課でした。凸版では、システィーナ礼拝堂の最後の審判や唐招提寺の伽藍を空中浮遊のような現実では不可能な角度で見ることができます。土日には一般公開もしています。また国会図書館の総延長412kmもの書架をもつ新旧の巨大な書庫は、温度25℃湿度55%に保たれており、知識を後世に伝えるという責務を改めて感じさせてくれました。

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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