福島大学附属図書館報 『書燈』 No.28(2002.4.1)

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ニューヨーク州立大学に滞在して
横山 雅夫

  私は、文部科学省在外研究員として2000年8月から10ヶ月間、アメリカ合衆国ニューヨーク州のビンガムトンというところに滞在しました。ここにはニューヨーク州立大学ビンガムトン校(State University of New York at Binghamton)があり、私は「客員研究員」として研究を行いました。ニューヨーク州立大学はニューヨーク州に分散して置かれたいくつかの大学から成っていて、全部合わせると相当大規模な大学となります。ビンガムトン校はその一つですが、地元ではBinghamton Universityという別名でも呼ばれています。ニューヨーク州立大学ビンガムトン校は、五つの学部、すなわちHarpur College of Arts and Sciences、School of Education and Human Development、School of Management、Decker School of NursingおよびThomas J. Watson School of Engineering and Applied Scienceから成り、大学院の修士課程・博士課程は各学部に含まれています。学部名や後述の図書館名に学内および学外の貢献者の名前が頻繁に使われているのが印象的です。

 私の所属していたのはThomas J. Watson School of Engineering and Applied Science のDepartment of Systems Science and Industrial Engineeringという学科です。この学科には、現在私の研究していることがら、すなわち、生産計画、スケジューリング、在庫管理、ヒューリスティック・アルゴリズム等と同じ課題について研究している研究者が何人かいて、そのうち2人の方と共同研究を行いました。研究成果は2つの論文として学術雑誌に投稿しました。

 研究とは別に、大学の各種の授業を聴講させてもらいました。これにより授業の形態や学生の様子などを見ることができました。主に大学院の学生を見ていたせいかもしれませんが、学生は勤勉でやる気十分で、私はこの大学の先生たちのことがとてもうらやましく思いました。少しだけですが授業も担当させていただきました。資料を作成するなどの準備は大変でしたが、よい経験になりました。

 さて、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校には、中央附属図書館にあたるGlenn G. Bartle Libraryという名の図書館とScience Libraryと呼ばれる図書館があります。前者は芸術、人文科学、社会科学、数学、計算機科学等の分野の図書・雑誌、後者は理学分野の図書・雑誌を置いています。蔵書数は資料によると、図書1,668,720冊、学術雑誌7,194種類、マイクロフィルム1,698,029点等となっています。

 私はGlenn G. Bartle Libraryだけを利用しました。写真は、雨の日に撮ったのであまりうまくは写っていないかもしれませんが、この図書館の一部です。5階建ての建物で、地下には事務室や売店があります。売店は新学期になると教科書や文房具その他を買う学生で満員でした。

 図書館で私が最もよく利用したのは、学術雑誌の閲覧とコピーでした。製本していない新着雑誌の置いてある部屋は、だれでも自由に入って閲覧・コピーができるようになっています。製本済みの雑誌の置いてある部屋も通常の開架式で、また照明がずっとついているので、誰かが照明を切って真っ暗になったらどうしようとか移動式書棚に挟まれはしないだろうかといった不安がなく、落ち着いて本が探せます。複写機を利用する場合、学生はプリペイド・カードを用いてコピーするようになっています。自動販売機にお金を入れてカードを買い、コピーの際にこれを使用しますが、使い捨てではなく、同じ自動販売機で追加書き込みして再利用することもできます。コピー代はとても安いものだったので、コピー1枚あたりいくらしたか忘れてしまいました。

 アメリカでの10ヶ月、不安なことや辛いことも色々あったはずなのに、今ではいい思い出ばかりが心に残っています。

(行政社会学部教授)

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