『書燈』 No.20(1998.4.1)

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    「やさしい」図書館に…
        カウンターの内側から
   大学院教育学研究科 栗田 寛


 1月から、新しいコンピュータが導入されて、便利になったと感じている人は、多いのではないでしょうか。私自身、カウンターで本の貸出しをしたり、検索をしたりしていて、その利便性とスピーディーな処理に驚き、感心しています。

 カウンターで、そんな風にコンピュータと向かい合いながら、時々ふと手を休めて、ぼんやりと考えたりすることがあります。それは、図書館の仕事も、コンピュータによって可能になる領域が、より増えていくだろうということです。そうなれば、いつかは銀行でお金を引き出すように、カード一枚でいつでも自由に本を借りることができるようになるかもしれません。そこでは、すべてコンピュータが処理してくれるから、借りる側にしてみれば、職員とのわずらわしい対応もしなくていいし、注意されることもありません。

 でも、もしそうなったら、私たちの役割はどうなるのでしょう。人員削減で、私たちの存在はなくなるのでしょうか。これからの図書館について、ちょっと考えてみました。

 私の望む図書館は、便利でしかも「やさしい」図書館です。それはいかなる図書館でしょう。

 一つには、やはり利用者にとって親しみやすい場所にすることです。重々しいゲートを二つも通り抜けるとき、少し緊張したり、戸惑うこともあるかもしれませんが、その先にちょっとした温かさや安らぎがあれば良いなと思います。

 二つ目には、本にとって「やさしい」図書館であることです。傷ついていたり、落書きされていると、少し悲しいです。それ以上に、本は単なるモノではなく、公共物であり歴史的財産でもあるのです。だから、本と利用者の間に立ってそれをチェックすることで、本の命をのばし価値を高めていけたらと思います。人間の少しの心遣いによって、本と人とのつながりが、有機的なものになればと思います。

 分からないことがあったら、何でも気軽に聞いて下さい。私たちはコンピュータではないから…。


lib@mail.ipc.fukushima-u.ac.jp

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