『書燈』 No.21(1998.10.1)

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平成10年度大学図書館職員長期研修報告

情報管理係 安斎善明


 研修は、平成10年7月13日から7月31日までの3週間、最初の1週間はつくば地区、残りの2週間は東京地区で開催されました。北は北海道、南は鹿児島までの国公私立大、各機関より42名の研修生が受講しました。

 研修内容は、講義の他、実習、グループ討議、見学研修と、「大学図書館行政」から始まり「情報リテラシー教育への参画」まで多岐にわたり、充実した毎日を過ごす事ができました。

 研修のテーマは、電子図書館への対応と電子図書館時代の図書館サービスの在り方でした。

 講義で説明された「電子図書館システムの研究」の中で印象に残った研究は次のとおりでした。

 (1)分類番号生成システム…資料の目録情報源と目次をOCRで読み取り変換し、自然語処理で分類番号を生成するシステムで、現在約80%の正解率である。

 (2)NACSIS-ELS…雑誌のすべてのページを画像としてデータベースに蓄積し、利用者の手元に高速ネットワークを通して学術情報センターから直接供給する機能を実現している。

 (3)Z39.50を用いた日本語書誌情報サーバの試作…情報提供にWWWを用いるシステムでは、検索結果集合の蓄積や、ネットワーク上の複数のデータベースに対する同時検索などが行えなかった。ANSIによる標準情報検索プロトコルであるZ39.50に基づいたシステム開発を行うことによって、これらの欠点を克服できる。

 (4)WWWページへの多言語アクセスシステム(MHTML)…Webページを読むために普及しているNetscap CommunicatorやMicrosoft Internet Explorerなどのブラウザソフトでは同一ページにいくつもの言語があるとうまく表示されない。しかしMHTMLを用いると、テキスト内で実際に使われている文字を自動的に調べ、その文字フォントだけを先に送ることにより、利用者側は特別な準備なしに、どんな端末でも、ブラウザソフトが何であっても、また同一テキスト内で使われている言語が何種類であっても、うまく表示できる。

 (5)立体自動書庫…立体の書庫で、小さなボックスの集合体であり、従来の分類番号別に収納するのではなく、ボックス単位でコンピュータに管理され、受入順に収納される。

 また、見学研修で印象に残ったことは次のとおりでした。

 (1)筑波大学附属図書館…筑波大学で作成されている各種データベースをハイパーリンクし横断的検索を可能にしている電子図書館システム。また図書館ボランティアが48名いて、いろいろな活動をしているのには驚きました。

 (2)慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス…図書館はなく、紙や電子といった媒体に関係なく一元的にサービスするという考え方から、メディアセンターが置かれている。また学生は、入学時から徹底したコンピュータ教育を受けている。

 (3)国立国会図書館…古い資料を専門職の方が見事に修復している姿には、感心させられました。

 (4)東京工業大学附属図書館…Arielという文献画像伝送システム(文献をスキャンで読み込んで画像データ化し、画像データを圧縮し、圧縮されたデータをインターネットを通じて他のArielシステムへ転送し、転送された圧縮データを画像データに直し、プリンタから出力する。)

 電子図書館はマルチメディア技術を最高度に利用したシステムである。そして利用のために取り出す情報の単位は細かいものになる。何がその基本単位かは、資料等により異なり、うまく設定し、それを種々の方法で検索して、答を利用者に与えることができなければならない。

 さらに電子図書館においては、どの範囲の情報を収集すべきか、レファレンスの在り方はどうなるのか、貸出・返却という概念はどうなるのか、知的所有権問題など、いろいろ問題があります。

 目標とする電子図書館をどのように実現していくかを考えるのに大変貴重な研修となり、この研修で得た多くの知識を手がかりに勉強していきたいと思います。

 最後に、文部省を始めとして、研修全般にわたりお世話いただいた図書館情報大学の皆様、講師の皆様、研修の仲間の皆様、そして、お忙しい中こころよく研修に送り出していただいた図書館の皆様、情報管理係の皆様に心より感謝いたします。


lib@mail.ipc.fukushima-u.ac.jp

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